イリスがアーサーとセシリアを見つめ、語り始めた。
「まずは、私自身の出自から話さなければいけないわね」
「私はかつてポールシフトによる大氷河期や核戦争が重なり、この星を離れざるを得なかった人類の末裔。私たちは宇宙に移住し、別の次元で進化を続けてきたの」
「地球人のDNAを受け継いでいるから見た目はあなたたちと変わらない。ただ、進化の過程や時間軸が異なるから、私たちはあなたたちとは違う知識と技術体系を持ってるの」
「私は科学者よ。私自身は眉間の奥に形あるマイクロチップをインプラントしているけど、セシリアに施したのは最新モデル「磁性微粒子付きオンチップ型素材を用いたマイクロチップ」。これは私が開発し、実用化したものなの」
「セシリアはまだ幼い。もしすべてを一度に思い出せば、脳機能に異常をきたすおそれがあるわ。そのため、記憶は封印してあるの。成長に合わせて徐々に記憶を呼び覚まし、やがて私とテレパシー通信ができるようにマイクロチップにプログラミングしているわ」
「地球は今、次元上昇しなければならない段階にあるの。そうしなければ、この星は持たない。我々の星が中心となって連合体を結成し、宇宙から見守っているわ」
「もちろん、あなた一人の力で地球を変えられるとは言わない。だけど、あなたのようなニュータイプの素養を持つ人間が目覚め、自分にできることを一つ一つやっていくしかない。地道だけど、それが一番の近道なの」
「だから私は、強引でもあなたをアブダクションして保護しなければならないと判断したのよ」
部屋の空気が静まり返った。アーサーは深く息を吐き、セシリアはただ黙ってイリスを見つめていた。
やがてアーサーが低い声で口を開いた。
「……私も軍関係者から地球外知的生命体の話は色々と耳にしてきた。だが、まさか本当だったとはな。夢のような話だが――ロナの件といい、こうして目の前に証拠がある以上、受け入れるしかない」
そして少し間を置き、父親らしい柔らかさをにじませて言葉を続けた。
「わかった。君たちのことは誰にも言わず、内密にしておこう。2人とも引き続き、セシリアの良き友人でいてくれ。あの子は本しか興味ないからな」
その言葉に、イリスもロナもセシリアも、安堵の表情を浮かべた。
「さあ、食事にしよう。2人とも、地球の食べ物は口に合うかな?」
イリスが答える。
「ええ、私は元地球人ですもの」
ロナも答える。
「私は何でも食べるわ。地球の食べ物は美味しいという話を、第7宇宙の破壊神・ビルスっていう神様から聞いてるの」
セシリアは思わず爆笑した。
その笑いにつられて、アーサーも声を上げて笑った。
イリスもロナも、そんな二人の様子を見て安堵の笑みを浮かべた。
重苦しい告白の後に訪れた、ささやかな団らんの時間。食卓には、ようやく穏やかな空気が戻っていた。
『ポータルクロニクル』
©2025 高橋剛(未来叙事創作者)/AI支援
登場キャラクター紹介
セシリア・フェアチャイルド
物語の軸となる存在。妖精ロナと同居中。イリスの告白に自身の身に起こったことを知る。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。
イリス
太古に地球を離れた人類の末裔で科学者。地球人のDNAを受け継ぐため、北欧の女性を思わせる姿をしている。自身の出自やセシリアへ最新モデルのマイクロチップをインプラントしたことを告白した。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。
ロナ
イリスによって召喚された妖精で、天然ニュータイプ。宇宙海賊マザー・バンガード元艦長で現在も軍属。セシリア宅で同居中。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。
アーサー・フェアチャイルド
セシリアの父。イギリス海兵隊大佐。妖精ロナやイリスの告白に驚きつつも、2人を温かく見守っている。セシリアとは父子家庭。
名前の由来は「ガンダムSEED FREEDOM」でミレニアムの副長を務めたアーサー・トラインから。
【朗読】ポータルクロニクル公式
使用音声ソフト
VOICEVOX:小夜/SAYO(朗読)
VOICEVOX:東北きりたん(イリス)
VOICEVOX:中部つるぎ(ロナ)
VOICEVOX:麒ヶ島宗麟(アーサー)
エンディングテーマ
ミッドナイトムーン/甘茶の音楽工房
Chronicle FM

こちらはChronicle FM、第7話編集後記をお届けします
イリスは、北欧人を思わせる容姿を持ち、人類に対して友好的であり、精神的な成長を促し、地球環境問題や世界平和にも深い関心を寄せ、さらに、テレパシー通信も可能と言われる「ノルディック型宇宙人」をイメージしています。しかし、彼女はプレアデス星団の出身ではなく、かつて地球から外宇宙へ旅立った人類の末裔という設定にしました。ガンダムでいえば、木星へと旅立った、ジュドー・アーシタ的な立ち位置にしました。
なお、イリスがテレパシー通信を可能としているのは、生まれつきの能力ではなく、眉間の奥にインプラントされたマイクロチップによるものであるとしました。
第1話では「セシリアの額に手をかざす」という曖昧な描写に留めましたが、第7話では一歩踏み込み、「磁性微粒子付きオンチップ型素材を用いたマイクロチップ」をインプラントしたという、現実の科学技術に基づいた要素であることを明かしました。これは現在、研究開発が進められている技術であり、生体適合性コーティングや適切な設計が施されれば安全性が示されているものも存在します。実用化への期待は高まっていますが、MRI検査など医療機器との併用や長期的な安全性については慎重な検証が不可欠です。
しかし、イリスの星の科学技術はこれらの課題をすでに克服しており、難なく実用化に成功しているとし、物語にリアリティと説得力を持たせています。

