放課後の図書館は、静かな呼吸をしているようだった。
窓の外では夕暮れが街を染め、館内には紙の匂いと、ページをめくる音だけが漂っている。
セシリアは、いつものように奥の席に腰を下ろし、本の世界に没頭していた。
学校でも家でも居場所を見つけられない彼女にとって、図書館は唯一、心を落ち着けられる避難所だった。
閉館のチャイムが鳴るまで、ここで過ごすのが日課となっていた。
その静寂を破るように、声がかかった。
「その本、面白い?」
放課後の図書館は、静かな呼吸をしているようだった。
窓の外では夕暮れが街を染め、館内には紙の匂いと、ページをめくる音だけが漂っている。
セシリアは、いつものように奥の席に腰を下ろし、本の世界に没頭していた。
学校でも家でも居場所を見つけられない彼女にとって、図書館は唯一、心を落ち着けられる避難所だった。
閉館のチャイムが鳴るまで、ここで過ごすのが日課となっていた。
その静寂を破るように、声がかかった。
「その本、面白い?」
顔を上げると、見知らぬ女性が――さりげなくセシリアの隣に座ってきた。
柔らかな笑みを浮かべ、まるで偶然を装うかのように自然に話しかけてくる。
イリス――地球人に扮した存在であることを、セシリアはまだ知らない。
イリスはセシリアの読んでいる本に視線を落とし、さらりと言った。
「その参考になる部分なら、あの棚の三段目、左から二冊目の本の……そうね、123ページに書いてあるわ」
セシリアは目を瞬かせた。
「どうしてそんなこと、分かるの?」
イリスは軽く眉間を指さす。
「ここに、マイクロチップが入っているのよ」
彼女の脳内に埋め込まれたそれは――
地球人との会話を苦にせず、仲間とはテレパシーで交信でき、見ただけで瞬時に全文を記憶できる、高性能な装置だった。
地球でも一部の人間が模倣してインプラントを試みているが、その性能は雲泥の差。精度も速度も、比べものにならなかった。
あまりにも自然な口ぶりに、冗談なのか本気なのか判断がつかない。
けれど、彼女の瞳には不思議な確信が宿っていた。
セシリアは首をかしげながらも、なぜか心を許せる気がした。
初対面のはずなのに、どこか懐かしい。
まるで近所のお姉さんのように親しみやすく、孤独な日常に差し込む一筋の光のようだった。
彼女は知らない。
かつて自分がアブダクションされ、記憶を消されたことを。
そして、目の前の女性こそが、その時に出会った存在であることを――。
『ポータルクロニクル』
©2025 高橋剛(創作家)/AI支援
【朗読】ポータルクロニクル公式
使用音声ソフト
VOICEVOX:小夜/SAYO(朗読/セシリア)
VOICEVOX:東北きりたん(イリス)
エンディングテーマ
ミッドナイトムーン/甘茶の音楽工房
登場キャラクター紹介
セシリア・フェアチャイルド
物語の軸となる存在。 幼少期にアブダクションを経験した過去を持ちながら、その記憶は封じられている。 不思議世界への関心を胸に過ごす。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。
イリス
北欧の女性を思わせる姿をした宇宙的存在。
深い青の瞳と金色の髪を持ち、静謐な気配を纏う。
セシリアにとって「導き手」であり、「問いを投げかける存在」。
彼女の言葉は、セシリアの心の奥に眠る“自由への希求”を呼び覚ます。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。
Chronicle FM
©音読さん
構成について
これまでは本編、朗読、Chronicle FMを別々に投稿していましたが、話数が増えてくるにつれて、似たようなタイトルが並ぶと少し分かりづらいかもしれないと思いまして、1ページの中で本編・朗読・登場キャラクター紹介・Chronicle FM(編集後記)をまとめてご覧いただけるようにしました。
noteでは挿絵付きで、ホームページでは文字のみで、ゆっくり物語の世界をお楽しみいただけます。
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