ポータルクロニクル Season 1 第3話「偶然は運命になる・前編」

放課後の図書館は、静かな呼吸をしているようだった。
窓の外では夕暮れが街を染め、館内には紙の匂いと、ページをめくる音だけが漂っている。

セシリアは、いつものように奥の席に腰を下ろし、本の世界に没頭していた。
学校でも家でも居場所を見つけられない彼女にとって、図書館は唯一、心を落ち着けられる避難所だった。
閉館のチャイムが鳴るまで、ここで過ごすのが日課となっていた。

その静寂を破るように、声がかかった。
「その本、面白い?」

放課後の図書館は、静かな呼吸をしているようだった。
窓の外では夕暮れが街を染め、館内には紙の匂いと、ページをめくる音だけが漂っている。

セシリアは、いつものように奥の席に腰を下ろし、本の世界に没頭していた。
学校でも家でも居場所を見つけられない彼女にとって、図書館は唯一、心を落ち着けられる避難所だった。
閉館のチャイムが鳴るまで、ここで過ごすのが日課となっていた。

その静寂を破るように、声がかかった。
「その本、面白い?」

顔を上げると、見知らぬ女性が――さりげなくセシリアの隣に座ってきた。
柔らかな笑みを浮かべ、まるで偶然を装うかのように自然に話しかけてくる。
イリス――地球人に扮した存在であることを、セシリアはまだ知らない。

イリスはセシリアの読んでいる本に視線を落とし、さらりと言った。
「その参考になる部分なら、あの棚の三段目、左から二冊目の本の……そうね、123ページに書いてあるわ」

セシリアは目を瞬かせた。
「どうしてそんなこと、分かるの?」

イリスは軽く眉間を指さす。
「ここに、マイクロチップが入っているのよ」

彼女の脳内に埋め込まれたそれは――
地球人との会話を苦にせず、仲間とはテレパシーで交信でき、見ただけで瞬時に全文を記憶できる、高性能な装置だった。
地球でも一部の人間が模倣してインプラントを試みているが、その性能は雲泥の差。精度も速度も、比べものにならなかった。

あまりにも自然な口ぶりに、冗談なのか本気なのか判断がつかない。
けれど、彼女の瞳には不思議な確信が宿っていた。

セシリアは首をかしげながらも、なぜか心を許せる気がした。
初対面のはずなのに、どこか懐かしい。
まるで近所のお姉さんのように親しみやすく、孤独な日常に差し込む一筋の光のようだった。

彼女は知らない。
かつて自分がアブダクションされ、記憶を消されたことを。
そして、目の前の女性こそが、その時に出会った存在であることを――。

登場キャラクター紹介

セシリア・フェアチャイルド
物語の軸となる存在。 幼少期にアブダクションを経験した過去を持ちながら、その記憶は封じられている。 不思議世界への関心を胸に過ごす。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。

イリス
北欧の女性を思わせる姿をした宇宙的存在。深い青の瞳と金色の髪を持ち、静謐な気配を纏う。セシリアにとって「導き手」であり、「問いを投げかける存在」。彼女の言葉は、セシリアの心の奥に眠る“自由への希求”を呼び覚ます。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。

編集後記

セシリアをアブダクションしたイリスですが、彼女が単なる“地球人に扮した存在”であるのか、それとも別の意図を持つ存在なのか、今後の展開を楽しみにお待ちください。