ポータルクロニクル Season 3 第6話「ロナの変化」

「駐車場に着いたわ」
「カミーユ、ありがとう。予定より大幅に早く着いたようね。ロナの体のこともあるし、集合時間は48時間後でいいかしら?」

イリスの問いに、セシリアが頷いた。
「OKよ。私たちもそのほうが助かるわ。樹海からうちの裏山まで、どんなにスムーズに行っても24時間はかかるもの。来る時なんて、途中で何度も日本の人に道を聞いて大変だったわ……」

「じゃあ、また後でね。デシュ、偵察がてら先に樹海へ入って先導して。母船はすでに着陸させて光学迷彩で隠してあるわ」

「任務……了解」
デシュを先頭に、イリスとロナは樹海の奥へと消えていった。

カミーユはセシリアに向き直る。
「私たちは迂回してFREEDEN Ⅲへ向かうわよ。そこからタクシーで河口湖駅へ。駅から電車で羽田空港へ行くのが一番確実ね。空港内のホテルで一泊しましょう」

こうして二人は羽田空港へ向けて出発した。

一方その頃、イリスたちは母船へと到着していた。

「ロナ、早速だけど、この検査着に着替えて。ドクターはもう準備してくれてるわ」
「OK」

検査着に着替えたロナは、イリスに付き添われて検査室へ入った。
「失礼します。ロナです」

初老の医師が振り返り、にやりと笑った。
「はじめましてじゃな、妖精さん。ワシはヘンリー・フィーア。専門は産婦人科じゃが、一応、全診療科を担当しておる。オペも得意じゃ。皆からは頭文字を取って“H”と呼ばれておる。決してスケベの“H”ではない」

「見るからにいやらしい産婦人科医じゃない」
「ええい、このいやらしい顔は生まれつきじゃ。ほっとけ」
「ヘンリー先生、面白い人ね」

ヘンリーは手際よく器具を準備しながら言った。
「まずは採血じゃ」

採血を終えると、次の機器を指さす。
「次はこれに仰向けで入って寝てくれ。10分ほどで全身スキャンが完了する。腫瘍検出も疾患評価もできる優れモノじゃ」

「妖精の女体を診るのは初めてじゃ。興奮するわい」
「やっぱりスケベの“H”じゃない」

ロナは苦笑しながら機器の中へ入っていった。

検査が終わり、ヘンリーがロナに声を掛ける。
「お疲れさん。ジュースでも飲んで休んでおれ。結果が出たら呼ぶから、診察室に来たまえ」

30分ほどして呼び出しがあり、ロナはイリスと共に診察室へ入った。

イリスが緊張した声で尋ねる。
「先生、どうです?」

ヘンリーはモニターを示しながら答えた。
「驚くことばかりじゃ」

「まず採血の結果じゃが……地球人のDNAとほぼ一致しておる。長い歴史の中で、ある種族がどこかのタイミングで妖精と人間に分岐したと考えるのが自然じゃろう」

「全身スキャンの結果も異常なしじゃ。羽は自然に脱落して消失したと見て間違いない。背骨や神経系統も人間と大差ない。お前さんも特に違和感はないじゃろう?」

「ええ。ただ、羽がなくなってから、重力を直接受けている感じがあるわ」

「なるほど。羽が重力軽減の役割を担っていたのじゃろう」

ロナは少し表情を曇らせた。
「それと……これからは私の姿が全員に見えてしまうわ」

「都合よく姿を隠せなくなったということじゃな。まあ、それは仕方あるまい」
「そうですね」

イリスが胸を撫で下ろす。
「なにはともあれ、よかったわ!」

ロナがふと尋ねた。
「ヘンリー先生も、イリスと同じ星の人?」

「そうじゃ。つまりワシも“元地球人”ということじゃ。お前さんの先祖と、どこかで繋がっておるかもしれんのう」

『ポータルクロニクル』
©2026 高橋剛(未来叙事創作者)/AI支援

登場キャラクター紹介

セシリア・フェアチャイルド
物語の軸を担う存在。大学院の卒業式のため、日本フィールドワークを終え、母国イングランドに帰郷することとなった。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。

イリス
太古に地球を離れた人類の末裔で科学者。セシリアをアブダクションしてインプラントを施した。常にセシリアに寄り添う良き理解者。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。

ロナ
父親との確執から家出していたところ、イリスによって呼び寄せられた元妖精で、天然ニュータイプ。身分は宇宙海賊マザー・バンガード元艦長という軍人。人間の食べ物を摂取し続けた結果、人間に変化した。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。

カミーユ
フランスと日本のハーフ女性。G教授の紹介で、セシリアの旅を支える運転手となる。元傭兵で、その類稀なる戦闘能力から「最高のニュータイプ」と呼ばれている。G教授とは間接的な縁があり、セシリアの日本でのフィールドワークに同行することになった。
名前の由来は「Zガンダム」の主人公カミーユ・ビダンから。

H教授(ヘンリー・フィーア)
イリスの星の医師。細い目、常に笑みを湛えたような表情とドジョウ髭が特徴。専門は産婦人科。
名前の由来は「ガンダムW」に登場したガンダムサンドロックの開発者・H教授から。

【朗読】ポータルクロニクル公式

使用音声ソフト
VOICEVOX:小夜/SAYO(朗読)
VOICEVOX:もち子(cv 明日葉よもぎ)(セシリア)
VOICEVOX:東北きりたん(イリス)
VOICEVOX:中部つるぎ(ロナ)
VOICEVOX:後鬼(カミーユ)
VOICEVOX:ちび式じい(H教授(ヘンリー・フィーア))

エンディングテーマ
Burning Heart/魔王魂

編集後記

今回登場したH教授の本名は、小説『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』において、ヘンリー・フィーアとされており、そこからそのまま設定を流用しています。
ちなみにキャラクターデザインの発注時には、ガンダムWの監督から「いやらしい産婦人科医」というユニークな要望があったそうで、ロナのセリフとして引用しました。

また、ロナの検査に使用された全身スキャン対応の検査機器は、実在するPET/CT統合装置「uEXPLORER」をモデルにしています。この装置は、低線量かつ短時間で全身をスキャンできるのが特長で、腫瘍の検出や炎症性疾患の評価などに活用されています。日本国内でも、すでにいくつかの医療機関で導入が進んでいます。