約束の日時、母船が静かに富士山の樹海に着陸した。
イリスたちは順にタラップを降り、湿った土と木々の匂いに包まれた大地に足を踏みしめる。森の奥からは風に揺れる木々のざわめきが響いていた。
全員が下車したのを確認すると、母船は再び光を放ち、空の間に溶け込むように消えていった。
数分後、セシリアが姿を現した。G教授の手配した飛行機で日本に到着し、約束の場所へと足を運んできたのだ。仲間たちは笑顔で彼女を迎え入れ、再会の喜びを分かち合う。
やがて一行は並んで樹海の道を歩き出した。湿った土を踏みしめ、木々の間を抜けて進むうち、ほどなくして無骨なコンクリートの建物「FREEDEN Ⅲ」が現れた。
工房の前に、漆黒の車体が横付けされた。重厚な存在感を放つその車は、まさに死神の名を冠するにふさわしい。――G教授が命名した“デスサイズヘルカスタム”だ。
車から一人の女性が降りてきた。
長い髪にフランスの血を感じさせる端正な顔立ち。鋭い眼差しの奥に、どこか温かさを秘めている。
「あなたが……カミーユ?」
セシリアが問いかけると、彼女は小さく頷いた。
「そう。私がカミーユ。教授から話は聞いてるわ。あなたがセシリアとイリスとそのお仲間ね。……これからは、あなたたちと共に行動する」
カミーユはデスサイズヘルカスタムの車体を軽く叩き、淡々と説明を添える。
「この車はパンクしないし、多少の水位なら問題なく走れるわ。それに、イリスたちも乗るから、短時間なら光学迷彩で姿を眩ませることもできる。周囲の映像をカメラで取り込み、車体表面に投影して背景に溶け込む仕組みよ。ただし排熱までは完全に隠せないから、長時間は無理だけどね」
セシリアは小さく息を吐き、肩をすくめる。
「光学迷彩とか……教授らしい発想だわ」
思わず苦笑しつつ、新たな仲間の存在を心強く感じた。
「さあ、日本での冒険を始めましょう!」
『ポータルクロニクル』
©2025 高橋剛(未来叙事創作者)/AI支援
登場キャラクター紹介
セシリア・フェアチャイルド
物語の軸を担う存在。G教授の推薦を受け、フィールドワークのため日本へ。漆黒の車“デスサイズヘルカスタム”を駆るカミーユを新たな仲間に迎え、セシリアの冒険は大きく動き出す。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。
カミーユ
フランスと日本のハーフ女性。G教授の紹介で、セシリアの旅を支える運転手となる。元傭兵で、その類稀なる戦闘能力から「最高のニュータイプ」と呼ばれている。G教授とは間接的な縁があり、セシリアの日本でのフィールドワークに同行することになった。
名前の由来は「Zガンダム」の主人公カミーユ・ビダンから。
【朗読】ポータルクロニクル公式
使用音声ソフト
VOICEVOX:小夜/SAYO(朗読)
VOICEVOX:もち子(cv 明日葉よもぎ)(セシリア)
VOICEVOX:後鬼(カミーユ)
エンディングテーマ
切なく儚いサイバー12/魔王魂
Chronicle FM

こちらはChronicle FM、Season 2 第4話編集後記をお届けします
当初「デスサイズヘルカスタム」は、米国大統領専用車“ビースト”のような重装甲車として構想していました。しかし、比較的平穏な日本という舞台設定を踏まえると、そこまでの防御性能は過剰だろうと判断しました。むしろ、イリスをはじめとする異界の者たちが乗ることを考えると、姿を消せる光学迷彩のほうが物語的にも合理的だと感じ、現在の仕様に落ち着きました。
また、ガンダムX好きとしては「FREEDEN Ⅲ」をどこかで登場させたいという思いが以前からあり、今回ようやく形にできたのも密かな喜びです。
カミーユについてですが、もともと女性名であることから、Zガンダムとは逆の、女性キャラクターに設定しました。ロナは軍人ですが、白兵戦の力量が未知数であるため、セシリアの護衛役を担わせるには不安が残ります。そこでカミーユを元傭兵という経歴にし、物語上のバランスを取ることにしました。

