「うわっ、なにこれ」
ロナが思わずのけぞった。

キッドが救命ポッドを軽く2度叩きながら問いかける。
「ロナさん、イリス様、これをどう見る?」
ロナは表面の焦げ跡を指でなぞりながら答えた。
「これはビーム兵器の照射痕よ。色々な角度から照射されてるわね。相手は……もしやファンネル使い!?ニュータイプ同士、争ったということ?」
キッドが言う。
「同時に多方向から撃つというやつ?」
「そうよ。この救命ポッドに乗ってた人も大したものね。全弾ギリギリで回避してる。民間人ではなく、よく訓練された軍人でしょうね」
ロナは驚きの声を漏らした。
イリスが上部の焦げ跡を見つめる。
「上部は大気圏突入前にビームライフルで撃たれた。焦げ具合が違うもの。それをかわしたものの、かすったせいか大気圏突入時に引火して、そのまま……」
ロナが続ける。
「だけど救命ポッドの偏向ノズルを調節して着水させ、海水で消火した……救命ポッドの材質が良いのかもしれないけど、よく生きてたわね。
しかしどういうレベルなの?ただの軍人ではないわ。間違いなくニュータイプね」
その時、別のメカニックが声を上げた。
「おーい、キッド。中から箱が2つ出てきたぞ」
「2つ?」
「そうだ。1つはフライトレコーダーだろうが、もう1つは何だコレ?まさかまた小型核じゃないだろうな」
「貸して。おいらが開けてみる」
キッドはまたもや簡単に解錠し、箱をガサガサと漁る。
「ディスクが何枚か……記録媒体かな?」
イリスが手を差し出す。
「貸して。解析ルームで見てみるわ。ロナ、一緒に見て」
「OK。だけどディスクにウイルスが仕込まれている可能性もあるんじゃない?」
「大丈夫よ。ウイルスが検知されたら自動的に無効化されるわ」
イリスは解析ルームにある再生機器にディスクを挿入した。
「……なにこのおぞましい映像は。吐き気がするわ」
そこには各種の人体実験の様子が記録されていた。
ある者は薬物を投与され、またある者は脳改造を施され、四肢を意図的に切断して義肢を装着したり、人体そのものをサイボーグ化しようと試みたりと――
イリスもロナも顔をしかめた。
「公式記録を奪って逃げてきたのか、それとも極秘にコピーして持ち出したのか……
映っている被験者は地球人?っぽいけど、場所は地球じゃないわよね」
イリスが不思議そうな顔をする。
ロナが言う。
「ヘンリー先生にも見せたらどう?かぐやとカミーユがストレッチャーで医務室に運んで行ったから、今頃、DNA解析とかしてるんじゃない?答え合わせできるかもね」
「そうね」
イリスが解析ルームから顔を出して言う。
「キッド。ヘンリー先生の所に持ってくわね」
「あいよ」
エレベーターを待っている間、イリスがロナにぽつりと言う。
「船に箱って……これ、まるで日本で出会った虚ろ舟みたいじゃない」
ロナも同調する。
「セシリアもそう言いそうね」
2人は顔を見合わせ、軽く微笑んだ。
登場キャラクター紹介
イリス
太古に地球を離れた人類の末裔で科学者。G教授の個人事務所「Professor G Archaeological Institute」研究員。常にセシリアに寄り添う良き理解者。父親は母星の代表職である最高評議会議長。科学者ならではの冷静な視点と、多次元的な知識を併せ持ち、チームの“要石”として活動する。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。
ロナ
人間の食べ物を摂取し続けたため、人間に変化した元妖精。G教授の個人事務所「Professor G Archaeological Institute」研究員。
元モビルスーツ乗りとしての腕を見込まれ、新たな移動手段となったシャトル「テンプテーション」の艦長となる。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。
キッド
弱冠12歳にしてイリスの母船「ラビアンローズ」のチーフメカニックを務める超天才少年。小型核搭載の時限爆弾装置ですら、“雑誌の付録レベル”扱いで、手際よく解体する。
名前の由来は「ガンダムX」に登場するキッド・サルサミル。
編集後記
今回のエピソードでは、ロナとイリスが初見で戦況からパイロットの背景に至るまで瞬時に読み解いてしまう──その卓越した分析力と、積み重ねてきた経験値を描き出しました。
ディスクに記録されていたおぞましい人体改造の履歴は、歴代ガンダム作品に登場した悲劇的なキャラクターたちを参照しています。
- 薬物投与による戦闘強化は「ガンダムSEED」のクロト、シャニ、オルガ
- 脳改造は「ガンダムNT」のリタ・ベルナル
- 四肢切断と義肢装着は「サンダーボルト」のダリル
- 人体サイボーグ化は「ガンダム00」のリヒティ
をモデルにしています。
そのディスクを携え、逃亡してきたと思われる女性は一体何者なのか。
彼女の存在は、物語に新たな影を落とし、Season 5の展開に静かで深い緊張をもたらします。
Season 5は、これまでのフィールドワークとは趣を異にし、より濃密で陰影のある物語へと踏み込んでいきます。
どうぞ引き続きお楽しみください。

