ポータルクロニクル Season 4 第6話「アカシックレコード・前編」

しばらくすると、空間の歪みが静かに収束した。

セシリアはめまいが治まるのを待ち、片膝をついた姿勢からゆっくりと立ち上がった。周囲を見ると、仲間たちも同じように片膝をつきながらも、どうにか無事な様子だった。

「ここは……何かの資料庫?図書館?……」

その瞬間、空間の隅から若い女性が姿を現した。

セシリアの身体が反射的に強張る。「誰!?」

女性は落ち着いた声で答えた。

「ここはアカシックレコードの間。私はその管理人、ファラ」

セシリアは思わず声を張り上げた。
「アカシックレコード!……つまり、地球とは別次元の……」

「そうです。あなた方が案内されたのはスフィンクスの前足の下。そこに、この“間”へ繋がるポータルが存在します」

「あなたですね。サイコフレームを持つ地球人というのは。お名前は?」

「セシリアよ」

「どうして地球人のあなたがそれを持っているのです?あれは地球外の技術のはずですが」

セシリアは胸元のサイコフレームを握りしめた。

「これは……隣にいる、かぐやから託されたの」

「なるほど……月の代表を務めていた方ですね。かぐやさんに感謝するのですね。あなたがここへ来られたのは、そのサイコフレームのおかげです」

「地球人の中には“アカシックレコードにアクセスできる”と吹聴する者がいるようですが、地球人にアクセス権は与えておりません。彼らは一体、何にアクセスしているのでしょう」

セシリアは思わず言い返した。

「じゃあ逆に聞くけど、どうしてスフィンクスと繋がってるの?地球って何なの?空間って?時間って?異次元世界って何?考えれば考えるほどわからなくなるわ」

「そうですね……」

ファラは床に座り、書物を広げながら語り始めた。

「まず認識してほしいのは、地球は“時間軸”や“空間軸”が異なる3つの世界が交わる場所に位置する、極めて特殊な星だということです」

「だからスフィンクスとポータルで繋がっているのは不自然ではありません。正確には、元々存在したポータルの上に“門番”としてスフィンクスが建造されたのです」

ファラは指を3本立てた。

「1つめは、現在・過去・未来――あらゆる時間が同時に存在する世界。未来人、過去人、超古代・超未来の生物が、時折、地球へ訪れることがあります」

そしてファラはロナに視線を向けた。
「2つめは、今は羽がなくなられてしまったようですが……そこの妖精さん。お名前は?」

「ロナよ」

「ロナさん。あなたのように、人間の身体に昆虫の羽を持つフェアリーであったり、あるいは神話や民間伝承に登場する神々のように、複数の生物パターンが組み合わさった世界です」

「3つめが、あなたたち地球人が生きる“縦・横・高さ”の3次元世界。時間は過去から未来へ直線的に流れ、あなた方は“今”に生きている」

「しかし、地球は他の世界との交点になっているため、ときどき異世界の住人が姿を見せる。地球とは、そういう構造なのです」

ファラは書物を閉じ、静かに言った。

「私たち異次元世界の住人から見ると、あなた方は“時間・空間・生物パターン”に縛られた、不自由な世界で生きているように見えます」

登場キャラクター紹介

セシリア・フェアチャイルド
物語の軸を担う存在。G教授の個人事務所「Professor G Archaeological Institute」研究員。G教授や仲間と共にエジプトフィールドワークに向かい、スフィンクスからアカシックレコードに転移。ネフェル、ファラといった異次元人と邂逅する。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。

ロナ
人間の食べ物を摂取し続けたため、人間に変化した元妖精。G教授の個人事務所「Professor G Archaeological Institute」研究員。仲間と共にアカシックレコードに転移し、管理人ファラと邂逅する。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。

ファラ
アカシックレコードの“間”を守護する若き女性管理人。訪れた者に“宇宙の本質”を語り、必要とあれば導きを与える。セシリアたち外来者に対しても、落ち着いた知性と礼節をもって応じる一方、地球人によるアクセスには厳しい姿勢を見せるなど、管理人としての責任感も強い。
名前の由来は、「Vガンダム」に登場するザンスカール帝国軍“ベスパ”所属の女性士官ファラ・グリフォンから。

編集後記

今回初登場となるファラは、かぐやとの初邂逅のシーン(ポータルクロニクル Season 2 第7話「月が見えた!・前編」)と同様に、セシリアとの一対一の対話を通じて“導き”を与える、メンター的な役割を担わせました。
内容としては、法華経・見宝塔品に説かれる「虚空会の儀式」、すなわち虚空に宝塔が出現し、諸仏が集い、重層的な宇宙構造が展開されるという壮大な世界観を提示しています。日本を代表する超常現象研究家・秋山眞人さんも、YouTubeや書籍で同様のテーマを語られていましたね。

当初は、元ネタである『Vガンダム』のファラ・グリフォンのように、非情でドSな人物像を想定していたのですが、生成された挿絵を見た時、まるでラクス・クラインのような柔らかい雰囲気をまとっていたため、急遽、セリフの言い回しもラクス寄りの穏やかなものへと調整しました。

また、エドガー・ケイシーのリーディングでは、スフィンクスの前足の下に「記録の間(Hall of Records)」が存在するとされており、本作でもその説を採用しました。

次回も今回と同様、ポータルクロニクルの核心とも言える“法華経の世界観”の一端に触れる、重要なエピソードとなります。
ぜひご期待ください。