「みんな、ちょっといいか?」
G教授が口を開いた。
「かぐや、君はストーンヘンジから降り立ったな。他にもイギリス国内に“宇宙と地球の交信ポイント”はあるのか?」
「はい。グラストンベリー周辺や、レンデルシャムの森がそうです」
アーサーが食い気味に割って入る。
「それなら私も聞いたことがある。“レンデルシャムの森事件”。教授もご存じでしょう?」
「もちろん、存じ上げてます」
アーサーは一同を見渡して話を続ける。
「1980年12月27日、当時、アメリカ軍が駐留していたウッドブリッジ基地周辺にある森で、基地の軍人が宇宙人を目撃したという証言がある。それどころか、基地指揮官が宇宙人と会話していたという話まである。公式には“不明な光体”扱いだが」
かぐやが補足する。
「今出てきた場所はレイラインの交点――宇宙エネルギーと地球エネルギーが交わる場所なのです」
セシリアが頷く。
「だから南イングランドはミステリーサークルが多いのね」
「ミステリーサークルだったらここから見えるわよ」
イリスが通路の窓際へ皆を誘導する。
眼下には、幾何学模様のミステリーサークルが広がっていた。
イリスが説明を続ける。
「中には地球人アーティストが作ったものもあるけど、ほとんどは宇宙存在によるものよ。私たちは元地球人だから直接話せるけど、他の種族はそうはいかない。 だから、こうして“シンボルメッセージ”を刻むのだと思うわ」
G教授が腕を組む。
「どうやらエジプトにもポータル的な場所があるらしい。――スフィンクスだ」
「スフィンクスですって!」
セシリアの目が輝く。
「そうだ。私の私見だが、ピラミッドも重要だが、本当に鍵を握っているのはスフィンクスではないかと思っている。そして今回、エジプト政府から“スフィンクスのお尻の入口から入ってよい”と許可が出た」
セシリアが息を呑む。
「セシリア、カミーユ。今回はエジプト政府の案件も絡む。ゆえに私も同行する。
大学では新学期に最低限の講義だけ済ませ、すぐに出発だ。
我々3人は航空機で向かう。
イリスたちは母船で、目立たぬ地点に着陸して待機していてくれ。
集合日時は、後日、セシリアに伝える」
一同のテンションが一気に上がった。
そこへ片付けを終えたヘンリーがやって来て、アーサーに声をかける。
「どうじゃね、大佐。上空からの景色は」
「信じられない光景です。我々の主任務は水陸両用作戦ですので、こうして上空からじっくり何かを見る機会はほとんどありません」
「我々も、こうしてお前さん方を上空から見守っておる」
母船はセシリア宅の裏山に到着した。
「ドクター、本当にお世話になりました」
「なんの」
二人は力強く握手を交わす。
「教授も楽しめたかな?」
「はい。オーバーテクノロジーをこの目で見られて、感無量です」
「皆、また遊びに来るがいい。イリスを通じて連絡してくれ。――ロナ、かぐや、今度一緒に日本の温泉に混浴に行こうじゃないか。ワシは水泳も得意でな」
かぐやが顔を真っ赤にする。
「私たちが温泉に入る頃合いを見計らって潜って待ってるつもりですか?
河童と間違われて捕獲されますよ」
一同、爆笑した。
セシリアがぽつりと言う。
「日本、また行きたいな……」
G教授が優しく言葉を返す。
「セシリア、前にも言ったが、世界を巡ってもう一回り成長して来い。それから日本だ」
ヘンリーが続ける。
「娘さん、良い師匠と友達を持って幸せだな。大佐もまだまだ長生きするぞ。お父さんのためにも、まだまだ成長せんとな」
「はい!」
セシリアは力強く答えた。
「イリスとロナは大佐の家に引き続き泊まらせてもらって様子を見てくれ。現役地球人にオペしたのは初めてじゃからな。カミーユさんとかぐやは娘さんの話し相手になってやれ」
「もちろんよ」
母船は静かに上昇し、夜空へと消えていった。
街灯もない漆黒の夜。
ただ一筋の流星だけが、空を横切った。
登場キャラクター紹介
セシリア・フェアチャイルド
物語の軸を担う存在。大学院を卒業し、晴れてイチ学者として独り立ちすることとなった。父や仲間と共に、つかの間の休暇を楽しむ。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。
イリス
太古に地球を離れた人類の末裔で科学者。セシリアをアブダクションしてインプラントを施した。常にセシリアに寄り添う良き理解者。父親は母星の代表職である最高評議会議長。
名前の由来はピエール=ナルシス・ゲラン作『モルフェウスとイーリス』から。
ロナ
人間の食べ物を摂取し続けたため、人間に変化した元妖精。なぜかヘンリーに気に入られ、かぐやと共に混浴に誘われる。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。
カミーユ
フランスと日本のハーフ女性。元傭兵で、その類稀なる戦闘能力から「最高のニュータイプ」と呼ばれている。セシリアが帰郷後も引き続き、共に旅を続ける。
名前の由来は「Zガンダム」の主人公カミーユ・ビダンから。
かぐや
日本人と地球外知的生命体とのハイブリッドの末裔で、前・月の代表。ヘンリーからは「セーラームーン」と呼ばれている。地球のオープンコンタクトの“先鋒”という、新たな任務の元、セシリアらと共に旅を続ける。独特なDNA構造、眉間にマイクロチップ、胸骨にサイコフレームがインプラントされていることが判明する。
G教授
考古学者で、セシリアの公私にわたる恩師。イギリス国防省「UFO desk」出身で、現在はイギリス政府のオープンコンタクト推進派メンバーであることが明かされる。初めて乗ったイリスの母船に驚嘆する。
名前の由来は「ガンダムW」に登場するプロフェッサーG。
アーサー・フェアチャイルド
セシリアの父親で父子家庭。イギリス海兵隊大佐。ヘンリーから左肩に残った弾丸の破片の摘出手術を受ける。
名前の由来は「ガンダムSEED FREEDOM」でミレニアムの副長を務めたアーサー・トラインから。
ヘンリー・フィーア
イリス一族の専属ドクター。専門は産婦人科。人呼んで「スーパードクターH」。アーサーの弾丸摘出手術を行う。イリス、ロナ、かぐやから“変なおじさん”認定をされている。
名前の由来は小説『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』から。
編集後記
イギリスには、古来より「宇宙と地球が交わる場所」と語られてきた土地が点在しています。 ストーンヘンジをはじめ、レンデルシャムの森、グラストンベリー周辺、そして南イングランド一帯――これらの地域には、UFO目撃談や宇宙存在との交信体験が数多く残されています。
ストーンヘンジは古代の天文儀礼の場とも言われ、サイキックやチャネラーの間では「宇宙の存在の気配を感じる場所」として知られています。
レンデルシャムの森では、1980年に軍人たちが“宇宙人”を目撃したとされ、今もなお英国最大級のUFO事件として語り継がれています。
また、グラストンベリーやチャリス・ウェルはレイラインの交点に位置し、宇宙エネルギーと地球エネルギーが交わる“スピリチュアル・ノード(地球上の特定の地点において、宇宙エネルギーと地球エネルギーが交差し、感受性が高まるとされる場所 )”として多くの人々を惹きつけてきました。 南イングランドではミステリーサークルの発生も多く、宇宙存在からの象徴的メッセージだと考える人もいます。
ちなみに、4月29日に、2026年初となるミステリーサークルが発見されたそうです。
今回のエピソードでは、こうした“イギリスに点在する交信ポイント”を物語に織り込んでみました。 古代から続く謎と、現代の私たちが抱く宇宙への憧れ。その交差点に物語を置くことで、読者の皆さまにも少しだけ“宇宙の気配”を感じていただければ幸いです。
今回で Season 3 は一区切りとなり、来週からはいよいよ Season 4「エジプト編」が始まります。
G教授は何を知っているのか。そして、セシリアたちの前にはどのような光景が広がるのか。
物語はさらに深く、さらに広い世界へと踏み出していきます。
どうぞ引き続きお楽しみください。

