ポータルクロニクル Season 3 第12話「スーパードクターH・後編」

「よし、成功じゃ。……どれ、記録しておくか」

ヘンリーは摘出した弾丸の破片を容器に入れ、アーサーの肩口をポータブル型3Dスキャナーで撮影した。 麻酔から目覚めたアーサーに、破片を見せる。

「大佐、ご苦労じゃった。これが摘出した破片じゃ。そのまま動かんでいい。――ロナ、手伝ってくれ。大佐の足元を持ってストレッチャーへ。そこからメドベッドに移動じゃ。かぐや、交代だ」

かぐやと入れ替わるように、アーサーはメドベッドへ運ばれた。

「大佐、聞こえるか?30分ほど横になっておるだけで若返るぞ。タイマーをセットしておいたから、自動で開く。開いたら隣の診察室に来てくれ」

「ドクター、ありがとうございます。地球ではほぼ不可能と言われた手術、かなり時間がかかったのでは?」

「いや、確かに難しい部位じゃったが、1時間弱で終わったわ。なぜなら……ワシの異名は知っとるな?そう、“スーパードクターH”じゃ」

そこへセシリアが駆け込んできた。

「ドクター、本当にありがとうございます!」

「娘さんか。これでワシが“変なおじさん”ではないとわかったかね?」

ロナがすかさず突っ込む。

「ヘンリー先生、残念ながらもう認定されてます」

「ぐへっ……まったく、お前らは」

メドベッド室は笑いに包まれた。

30分後。 診察室にアーサーが姿を見せる。

「なんだ、みんな来てくれたのか」

「大佐、見たまえ」

ヘンリーはモニターを指し示す。

「これが全身データ。そしてこれが肩口じゃ。破片はきれいに消えとる。メドベッド効果で縫合跡もほとんどわからんじゃろ。他は異常なしじゃ」

「ありがとうございます。さすがスーパードクターですな。それに……身体が軽く感じます」

「まぁ、無事に終わって何よりじゃ。――問題はセーラームーン、お前じゃ」

「えっ、私ですか?何か悪いところが……?」

「いや、そういうわけではない。むしろ健康体じゃ。とりあえずモニターを見たまえ。全員見とるが、構わんか?」

「はい。私も自分の身体のこと、よくわかっていないので」

ヘンリーは画面を切り替える。

「眉間のインプラントはマイクロチップじゃな。だが胸骨のこれは何じゃ?サイコフレームか?」

「はい。月の代表への就任が確定したときに埋め込みました。代表の装束の胸部と共鳴する仕様だと聞いています。今は代表ではないので、ブレスレット型に変えました」

「なるほど……。次は採血データじゃ。大佐は問題なし。――かぐや、お前さん、日本人と地球外知的生命体のハイブリッドと言ったな?」

「はい」

「見て驚いたぞ。両者のDNAが見事に螺旋状に結合しておる。しかも見た目の遺伝情報を日本人のままに固定しとる。普通なら寿命が極端に短くなるが……逆じゃ。むしろ長寿傾向じゃ。こんな独特なDNA構造を見たのは初めてじゃ。極めて優秀なデザイナーがいるのじゃろう。我々より科学力が上かもしれん」

ヘンリーはニヤリと笑う。

「かぐや、胸部と腕のサイコフレームを共鳴させれば、本当にセーラームーンに変身できるかもしれんぞ。よかったらシースルーセーラー服をプレゼントしてやるぞよ。ぐへへへへ」

「もう!先生みたいな変なおじさん、初めて見ました」

一同、再び笑いに包まれた。

登場キャラクター紹介

セシリア・フェアチャイルド
物語の軸を担う存在。大学院を卒業し、晴れてイチ学者として独り立ちすることとなった。父や仲間と共に、つかの間の休暇を楽しむ。
名前の由来は「機動戦士ガンダム」でギレン・ザビの第1秘書を務める才色兼備の美女セシリアと、「ガンダムF91」のセシリー・フェアチャイルドから。

ロナ
人間の食べ物を摂取し続けたため、人間に変化した元妖精。なぜかヘンリーに気に入られ、助手として手伝う。
名前の由来は「ガンダムF91」に登場したセシリー・フェアチャイルドの本名であるベラ・ロナから。嫌いなものはアニメ同様、ラフレシア。

かぐや
日本人と地球外知的生命体とのハイブリッドの末裔で、前・月の代表。ヘンリーからは「セーラームーン」と呼ばれている。地球のオープンコンタクトの“先鋒”という、新たな任務の元、セシリアらと共に旅を続ける。独特なDNA構造、眉間にマイクロチップ、胸骨にサイコフレームがインプラントされていることが判明する。

アーサー・フェアチャイルド
セシリアの父親で父子家庭。イギリス海兵隊大佐。ヘンリーから左肩に残った弾丸の破片の摘出手術を受ける。
名前の由来は「ガンダムSEED FREEDOM」でミレニアムの副長を務めたアーサー・トラインから。

ヘンリー・フィーア
イリス一族の専属ドクター。専門は産婦人科。人呼んで「スーパードクターH」。アーサーの弾丸摘出手術を行う。イリス、ロナ、かぐやから“変なおじさん”認定をされている。
名前の由来は小説『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』から。

編集後記

UFO研究家ビリー・マイアー氏がプレアデス星人から聞いたとされる“宇宙史”によりますと、太古の地球には三種のヒト型宇宙存在が来訪し、当時の人類と交わり(混血)ながら、それぞれ異なる文化的・外見的系統を形づくっていったとされています。
プレアデス星人やウンモ星人は「金髪・碧眼・色白の北方系」に近い容貌を持ち、アポロ20号が撮影したとされる“月のモナリザ”は「黒髪で褐色の肌を持つ東方系」に類似していると語られています。日本人や中国人は、この東方系宇宙存在と地球人との混血の直系にあたるとされており、本作に登場する“かぐや”もその設定を受け継いでいます。

また、彼らの科学技術は地球よりもはるかに発達していると考えられますので、私たちのように携帯電話を使う必要はなく、眉間に埋め込まれたマイクロチップを介して通信しているのだろうと想像しました。眉間以外にも、何らかの用途を持つ金属をインプラントされている可能性が高いと考えました。